2009年2月27日金曜日

10年


パスポートの更新をした。
10年前の写真を見ながら、つくづくと考えてしまった。
ベトナムに住んだ、結婚した、メルボルンに来た、子供を2人も産んだ。
10年。
次の更新は2019年。
この10年は一体なにをするのだろう?

2009年2月16日月曜日

悲劇の呼び名

次女にはニックネームがある。
それもただ一人に使われるニックネーム。
いや、ニックネームですらない。
そもそもは私のいい加減な相づちから始まってしまった悲劇の呼び名。
それは「ジョーイ」。

いつも行くスーパーマーケット、当然妊娠中も大いに利用していた。
子供に優しいこの国で、レジのおばちゃんがあれやこれやと声をかけてくれる。
「ジョーイ」も産まれる前から、このおばちゃん達の関心を引いていた。

出産予定日も間近に控えたある日、ペニーというレジのおばちゃんと例によって
子供の事をいろいろ話した。
なぜか彼女には私が印象深く残ったらしく(なぜかある種の人には、私や長女が強く印象に残るらしい)、産まれるまでも、産まれてからも声をかけてくるようになった。

そしてその日に悲劇は起きた。
まだ2ヶ月にもなっていない「ジョーイ」が泣きに泣いて、
大汗かきながらレジを済ませていると、
ペニーが、大丈夫?とかどうしたの?とか話しかけてきた。
こちらとしては、お金を払わなければいけないわ、
長女はうろうろどこかへ消えそうになるわ、
「ジョーイ」はますます激しく泣くわで、ペニーへの返答も適当になっていた。
そんなカオスの中、彼女の悲劇の質問が繰り出されていた。

「ところで、その子ジョーイよね?」

汗だくになりながらどんな質問にも「Yes」か「She's O.K.」と答えていた延長で、
その質問にも「Yes」と言っていたのだ。
答えながら、レジを去りながら、「そうね、そうだと思ったのよ」と満足そうにうなずくペニーに違和感を覚えながら、
でも訂正せずにいた。
それがその後、低温やけどのように、じわじわと私を苦しめる原因になるとも知らないで、、、。

それ以来ペニーは、彼女のレジに並んでいない私のところにわざわざやって来ては、
「ジョーイはどう?」とか、次女が泣いていると、「今日のジョーイはどうしたの?」と、親戚のおばちゃんさながらの親しさで声をかけてくるようになった。
英語なので、名前で呼ばず「she」で済ます事も出来るのに、彼女はなぜか執拗に(と私には聞こえる)「ジョーイ」と呼ぶのだ。

毎回毎回声をかけられ「ジョーイ」と呼ばれるたびに、
「あ、実は違うんです。」と言わなくてはと思いつつ、
言い出せず、曖昧に笑いながら後ずさりしながらその場を後にする。
タイミングを失うたびに、一枚一枚薄いけど確実に重くなっていく布をまとうように、次女はますます「ジョーイ」になっていく。

悲劇の呼び名「ジョーイ」。
これが訂正される日はいつか来るのだろうか、、、、。


2009年2月6日金曜日

プリシラ先生

踊り好きな長女。
起きて寝るまで歌い踊っているので、
踊りと歌への情熱のはけ口として、ダンス教室に行かせる事にした。
(うるさくてかなわんよ、実際)

初回無料のレッスンがあるバレイのクラスへ行ってみた。
行ってみてびっくり。
講師はいかついおにいさんではないか。
顔は四角い、体毛は真っ黒で濃い、ダンサーらしからぬ固そうな筋肉。
だけど、腐ってもバレイの講師。
物腰は柔らか、というかほとんどおかま。映画「プリシラ」の世界。
声のだし方からして、ソフトだ。

プリシラ先生、8人の小さい女子に囲まれて、早速レッスン開始。
まずはつま先立で、教室中を練り歩く。
意外と真剣で、時々さぼってつま先立ちしていない子には、
容赦なく、だけどあくまでソフトに注意が飛ぶ。
「しっかり、つま先で!!」

振り付けに意味を付けて覚えやすくする。
「フェアリーダストが降ってきて〜(手をぴらぴらさせながら頭上から胸の辺りまでおろす)」
「ベイビーフェアリーを空へ返して〜(床から何かをすくい上げるようにして、鳥を空へ飛ばすように上へその何かを放つ)」
何度か同じ動きをやるのだけれど、子供のことゆえ雑な動作になってくる。
そうすると早速プリシラ先生の注意が飛ぶ。
「フェアリーなのよ(なぜか女言葉がしっくり)!もっと優しく!」

最後に5分ほど音楽をかけて、各自好きなように踊る時間が来た。
それぞれ自分が思い描くバレイの動きをするのだ。
とはいえなんせ3、4歳の子供の事。両手を頭の上であわせてくるくる回るくらいで、あまり創造的ではない。
始めのうちこそ「すてきよー。美しいわー。」と褒めていたプリシラ先生だったが、
「バレイってのはそれだけじゃないんよ!」とばかりに突如子供達の中に入って踊りだした。
ただでさえ大柄なプリシラ先生なのに、ちびっ子達の間に入って容赦なく踊り狂う。
ジャンプあり、ターンあり、ポーズあり、、、。
女子達、笑顔のまま固まっていた。

レッスン後の先生もおかしかった。
「みんなー、今日は楽しかったー?」
「はーい。」
「来週も来るかなー?」
「はーい。」
「今日は楽しかったねー。」
「はーい。」
「来週も来るよねー?」
「、、、はーい?」
今回は無料レッスンで来週からはレッスン料が発生するため、彼も必死なのだ。
プリシラ先生必死の営業活動なのだ。

あまりにも何度も今日は楽しかった事と来週もくる事を強調していたため、
笑顔だった女子とその親達の顔が、次第に固くなり、苦笑に変わっていった。

帰り道長女はまた行きたいとは言わず、
レッスン中に貸してもらった魔法の杖(銀色でキラキラしていて、先に星がついていた)がもらえなかった事にがっかりして、欲しいなー欲しいなーとつぶやいていた。

今回のレッスンに行くまでは、バレイを習うのーと嬉しそうに言っていた彼女だが、あれ以来全く口にしなくなった。
才能の芽をプリシラ先生に摘まれてしまったのだろうか?
そうだとしたらプリシラ先生の罪は、重い。