2007年11月29日木曜日

迷い犬

迷い犬を見つけた。
買い物の帰りに、風に舞う白いビニール袋を追って黒い小さな犬が、曲がり角からびよんと飛び出してきた。
首輪をしていたし、私の住んでいるあたりでは野良犬を日常的に見る事はないので、どこかから脱走してきたのだろう。あまり家から外に出た事がないのか、車に気をつけなくてはいけないという緊張感が低そうな犬だ。周りに犬を探している風な人もいないので捕まえて家に帰った。

夫は早速写真を撮って「犬見つけました」の」張り紙を作って、近所に5枚ほど貼った。娘は大喜びで一緒に転げ回っていた。犬と一緒に草むらに飛び込み、ボールを追い、しまいには水まで飲もうとしていた。チワワなので身長86センチの娘にはサイズがちょうどいいらしく、胸に抱えて歩き回っていた。
30度近くあった日で、日差しが強かった。飛び出したような大きな目の犬が私たちを見上げて目を細めた姿は、スターウオーズのキャラクターにそっくりだ。世話のめんどくささから動物はちょっとと考えていた私も、その面白い姿に「いてもいいかな」と思い直しそうだった。

が、幸か不幸か、後から思えばやっぱり幸なのだけど、その日の夕方には飼い主から連絡があり引き取られていった。
娘は犬がいなくなった事がよくわからないらしく、「いぬどこ?』を連発し、「あとで(帰ってくるね)」と一人納得していた。それを見た夫は、娘の不憫さと犬への想いで、目を潤ませていた。

暑い週末に起こった、小さな事件。

2007年11月16日金曜日

ドラえもん


漫画「ドラえもん」は、ご存知の通り猫型ロボット。だけど、居眠りしているうちにねずみに耳をかじられちゃったので、今のような容貌をしている、らしい。
実写版ドラえもん。実の名をマギー。彼女の場合はねずみにかじられたのじゃなくて、耳の皮膚がんになったので取られてしまったのだけれど。コリンウッドにあるチルドレンファームの中に住んでいた、ちょっと用心深い彼女。3年前に写真を撮って、その後何度か行ったけれど見かけない。元気でやっていてくれればいいけど。過去に行ってのび太君を助けているのだろうか?


(関係ないけど、「どらえもん」と打って変換すると、ちゃんと「どら」だけカタカナになって表示される。すごい)

2007年11月7日水曜日

好きな作家を共有する

本が好きだと公言していると、時々同じ本の虫に出会う。で、本の趣味まで合ってしまったりするとかなり嬉しい。日本語の本を手に入れるのが比較的難しい環境だと、お互い持っている本が交換できるというのは非常にありがたい。しかも趣味が似ていても、全く同じ本を持っている事はまれで、たいがい同じテイストででも今まで知らなかった作家の発掘が出来てしまったりもする。
こういう友人は、新作が出るととりあえず買ってしまう作家と同じぐらい貴重だ。
お互い交換した本について、あーでもないこーでもないと言い合うのもまた、楽しい。自分のなかでどう評価していいか迷う作品なんかは、是非読んでもらって意見されたい。

自分の持っている本をどんどん貸して、どんどん感想を聞きたい。と、思う一方で、自分の好きな作家が他の人の中で育っていくのを見ていると、一抹の寂しさがある。しかも自分では上手く表現できなかった、その作家や作品について的確に表現されたりすると、もやが晴れるようなさわやかさとともに、身悶えするような悔しさも覚える。大事に大事に手をかけて育てた子供が、社会の中で独り立ちしていくような、無力感。確かに自分の知っている子なのに、自分以外の人によって違う色を持つ。
それこそまさに、私がしたい事なのに、なぜか悲しい。

2007年11月2日金曜日

日本の年越し

11月になった。毎年毎年飽きもせずこの時期になると「早いなあ、一年って」とつぶやいている。
昔から年の変わる瞬間が好きだ。その年の恥や怠惰や傲慢や欲などが108以上の煩悩とともにすべて許される、あるいはなかった事にされるようで、清々しい。寒い家の外を思い浮かべながら暖かい部屋で、しみじみするのは何とも言えない味わいがある。

日本にいる時は、徐々にきつくなる寒さに促されて年を越すぞと気合いを入れていた。だけど、なにせオーストラリアではだんだん暖かくなってくるので気分が緩んでしまって、あれよあれよと流され気がつくと年が変わっているのだ。「あー夏本番だなあ」などといいながら海岸を歩いていると、2006年は2007年になっているのだ。
4年目のオーストラリア、季節が日本と同じではないのは分かっている。その原理も分かっているし、第一今更そんな事を話題にするのもなんだか恥ずかしい。と、いうよりオーストラリア初心者の様でちょっと悔しい気持ちもある。
クリスマスが暑いのにも慣れた、8月に暖房費が上がるのにも慣れた、自分の誕生日が真夏なのにも慣れた。
だけど、寒くない暮れと正月は、やっぱり寂しい。

池澤夏樹の短編で、日本人の男性とロシア人の女性のカップルが離婚するという話があった。彼らは日本に住んでいたが、彼女の「ロシアの空気がなければ生きていけないのよ」という理由で離婚する。
離婚してまで帰りたいというほど強く日本に惹かれないのだけれど、年末年始のあの荘厳な空気を思い出すとき、この彼女の言葉はひしひしと実感を持って心に迫ってくる。