夫の両親が住む街で、週に一回開かれるファーマーズマーケットに行った。
ファーマーズマーケットとは、農家の人が採れた野菜や果物をライトバンなどに積んで、広場に持って来て直接売るもの。
とはいえ、オーガニックパンや、自分で編んだ毛糸物のお店や手作りジャムの店などもある。
基本的には、普段何にもない広場に各々が売りたいものを持ち寄って開かれるマーケット。
そこに日本人の男の人がいた。白人のおじさんがパンを売ってるその脇を借りて、たこ焼きを売っていた。
歳は20代中頃か。小柄でやせ身。頭には黒に緑の線が入ったニット帽。夫の両親が住むその街はそう大きくなく、どちらかと言うと郊外というような土地。日本人はおろかアジア人はあまり見かけない。そこで見かけた日本人。しかもただ観光しているのではなく、たこ焼きを売っている。だからちょっと声をかけてみた。あまり話は好きではないようで、会話はあまり弾まなかった。でもあちこち旅行をし、まだこれからもしたい人らしかった。インドを主に回り、今はオーストラリアを回っているらしい。その関連性はあまりないようだった。ただ、若い旅行者によくあるように、予算の問題は常について回るらしく、今まではフルーツピッキング(野菜または果物の収穫)をして資金をひねり出していたらしい。が、これからは商売で世界を回るらしい。
たこ焼きでオーストラリアを回るのだ。
あまり顔色も良くなく、寒さなのか緊張なのかソースを絞り出す手が震えていた。ほんの一瞬接しただけだけど、この男の人はどこに行こうとしているのだろ、ふと気になった。心配というほど親身ではなく、興味というほど真剣でもなく。
ハノイにいた時よく会ったやたらと明るく社交的なバックパッカー達とは違った、なにか切実な、だけどひどく個人的なものを心に持っていそうだった。彼はそんな私の勝手な思いなどとは関係のないところで、たこ焼きを焼き続けるのだろうけど。
昨日徹夜で焼き方の練習始めました、と言っているようなたこ焼き5個4ドル。
エールの意味も込めて、2パック購入。