須賀敦子、この人の名前を見るだけで、何か背筋が伸びる思いがする。
読む事に関しては意外と門戸の広い私なのだけど、女性が書く文で面白いと思う事は、残念ながらあまり多くない。
(性差別は他ならぬ女性によって強化されている、となにかで読んだ事があるのだけど、とりあえずそれはここでは置くとして、、、)
そんな理由で、今までで最も本を読んだ大学時代でも、須賀敦子の本は敬遠して読まなかった。好きな作家の一人の池澤夏樹関連の読み物の中でもちょくちょく目にしたのだけど、やっぱり腰は重いままだった。
好きな作家の読み始めは、本当に良く覚えているのだけど、この作家だけは何故か全く思えていない。それなのに気が付いたら、海外生活に持って行く本の中に入っていた(重さとの戦いで選び抜かれた本は、言うまでもなく、かなりの重要度なのだ)。そして数回の日本帰国の際にも、オーストラリアに戻る際の荷物には、必ず数冊彼女の本が入ってる。
この作家に惹かれる理由はかなりはっきりしている。文が上品。「良家のお嬢さん」という事も勿論大きく影響しているのだけど、物事に対する姿勢がいつも正直で、厳しい。歯に衣着せぬ、というか、なあなあな感じが全然ない。1953年にフランスへ留学、一時帰国後に渡伊、帰国後大学の教授となる。また翻訳や自らの作品によって、日本とイタリアの文学界に大きな貢献をしたこの作家をして、「きっちり足に合ったの靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩けるのに」と言う。(手元に本がないので引用は正確ではないが「ユルスナールの靴」より)1929年生まれという世代の女性が、ここまでの事をしたのに、まだ足りないと。その厳しさが、ある種の清々しさとなって、文章に溢れている。
気に入った本は、本当に何度も読むのだけど、須賀敦子の本は本当に何度も読む。
始めから全部読み返すのではなくて、気に入ったところをひょいひょいと拾い読みする。どこにどんな話があったかはかなり良く覚えているので、その時浸りたい気分に合うページを読み返す。
だけど、彼女の文が読みたいと思うのは大抵決まっていて、疲れて気力が湧かない時や、たるんだ気持ちになってる自分に嫌気がさした時。彼女の厳しさで喝を入れ直したい。まねは出来ないけど、ちょっと影響されてみたいのだ。
何度も何度も読めて、その度になにか影響をを受続けられる作家を何人かも持つのは、かなり、人生を楽しくしてくれる、と思う。
「ユルスナールの靴」須賀敦子 白水uブックス 945円